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zoom RSS 『頑張れ山田君』パート7

<<   作成日時 : 2006/02/08 14:15   >>

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「はい」
僕は息も絶え絶えに答えてこのままでは失礼だと思ってなんとか体を起こして座った。三枝先輩も柳原先輩の隣に座った。
「そんなに優しいものじゃないだろう、陸上は」
僕を見ているようで少し遠くを見て柳原先輩は言った。三枝先輩は僕を気の毒そうに見て持っていたタオルを僕に渡した。
「汗拭かないと風邪引くわ」
「ありがとうございます」
疲れきった腕で僕はタオルを受け取った。今は疲れていて三枝先輩の心遣いが嬉しいとか思う余裕がなかった。
「あのね」
三枝先輩は柳原先輩の顔を伺いながら話し出した。
「山田君が入部したいって最初に言ってきたときに入部させないって言ったのなぜかわかる?いじわるでもなんでもないわ。言っていいかわからないけど、あなたの体系のことで部員から悪口が出ることは分かっていたのよ」
僕がハッとして柳原先輩を見ると先輩は僕を見ているようで少し遠くを見ていた。そして小さくため息をついて僕と目を合わせた。
「正直、100周を本当に周るとは思ってなかった。たぶん部員全員が」
「その辺はいじわるだったみたいね」
三枝先輩が笑って柳原先輩も笑った。僕は柳原先輩が笑うのを初めて見てとても驚いた。眉間には深く刻まれたシワは消えていた。僕が見ているのに気付くとわざとらしく咳払いをしてすぐに眉間にシワを作ったのには僕も三枝先輩も笑った。
 
「100周なんて滅多にやるもんじゃない。あんまり効率的でもないしな。図れるのは根性ぐらいだからな」
笑っている僕と三枝先輩を見て分が悪そうに僕の肩を叩いてそう言った。その力が妙に強かったのは気にしないことにした。きっと照れているんだ。
「明日からは堂々と来てもいい」
「ありがとうございます」
「だけど部員の厳しさが和らぐわけじゃないわ。そればかりは私たちはなんともできないから頑張ってね」
「はい」
柳原先輩の言葉に胸が躍って、三枝先輩の言葉に僕は肩をがくんと落とした。今日はなんだかとっても変な日だ。今日は月がとてもキレイな日だった。真っ暗なはずのグラウンドには月の光でできた僕たちの影が伸びていた。
「さて帰るか」
柳原先輩は立ち上がって屈伸をした。その姿を見て僕は走っている間に抱いた疑問を思い出した。
「あの聞いてもいいですか?」
「駄目だ」
いつも通りの眉間にシワを刻み込んで柳原先輩は即答した。その横で三枝先輩がクスクス笑って
「いいよ」と答えた。
「柳原先輩はどの競技をやっているんですか?」
そう言い終わると明らかに僕たちの間に流れる空気が変ったのを感じた。いきなり乾いたような。三枝先輩の笑いは止まったし、まぁ柳原先輩のシワの深さは変らなかったけど。しばらくの沈黙に僕はどうしていいかわからなくなって立ち上がって二人の顔を交互に見た。
「あのね、山田君」
「俺は走れないんだ」
三枝先輩の言葉を遮って柳原先輩から出た言葉は僕にとって信じられなくて、その事実は部活動中に指導をするだけの柳原先輩の姿を克明に僕の頭の中に浮き上がらせた。



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